小杉天外『初すがた』
■小杉天外『初すがた』(明治33年)読了。『魔風恋風』が通俗小説家としてのベストセラーなら、自然主義作家としての出世作はどうかと読んでみた(筑摩書房刊・明治文学全集65)。冒頭、延々とつづく演芸会のスケッチ風描写は「読者の感動すると否とは詩人の関する所では無い、詩人は、唯その空想したる物を在のままに写す可きのみである」(『はやり唄』「叙」より)の思想にそって、群衆の要所要所を会話中心に点描するスタイルが鮮やか。
この調子でと読み進めたところが後半は単に物語を語らんがための急速な場面転換となり、直接話法による会話の他はほとんどが人物の服装に関する描写のみで『魔風恋風』が顔をのぞかせている。物語自体は一葉『たけくらべ』の大人版といった面白みも何もないもの。天外のスタイルは風俗小説家としては無駄のないものなのかもしれないが『はやり唄』以降の全集は読む気がしなくなった。
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